“新鮮”をより早く。
全国各地の特産品が空を飛び、食卓へ
- 生鮮食品
“新鮮”をより早く。
全国各地の特産品が空を飛び、食卓へ
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国内航空輸送の新たな可能性
日本国内の物流はトラック輸送が大半を占めるが、野菜や果物、鮮魚など、わたしたちの食卓を彩るさまざまな食品をANA Cargoは運んでいる。特に時間を追うごとに鮮度が落ちる生鮮食品や高級食材にとって、輸送時間が圧倒的に短い航空輸送が果たす役割は大きい。
なかでも、離島の地産物輸送においては航空か、船舶かの二者択一である。スピード輸送が求められる現代において、ANA Cargoは荷主との信頼関係を築き、ニーズに沿った輸送を提案してきた。最高の鮮度でお届けすることにより、新たな食材との出会いや、よろこびを生み出せるよう日々尽力を続けている。
石垣島では、2013年に新石垣空港(南ぬ島~ぱいぬしま~石垣空港)が開港。それと同時にANAでは中型旅客機を導入した。観光ニーズの高まりに応え、2017年からは大型旅客機も導入。各都市からの直行便就航や機材の大型化が進み新たなネットワークが拡充され、ヒト・モノの流動は一気に高まった。
その裏で、石垣島発はパイナップルをはじめとした島の特産品が、これまでの船舶輸送から航空輸送へとシフトしつつあり、今日も座席下の貨物室を満載にして、全国各地へと運ばれている。
2年かけ、じっくりと丁寧に育て上げる
5月中旬から7月にかけて、石垣島ではパイナップルの収穫が最盛期を迎える。
「パイナップルは苗を植えてから、収穫まで2年間掛かります。時間を掛けてゆっくりと育てなければ美味しいパイナップルにはならないんですよ。」と語るのは、石垣島でパイナップルを栽培している有限会社平安名 石垣島パイン生果組合名蔵 代表取締役の平安名貞市(へいあんな・さだいち)さん。真っ黒に日焼けした肌。職人気質。はにかんだ笑顔には、なんとも優しい人柄が滲み出ている。
平安名さんは幼少期から家業の農家を手伝い、30歳で独立。以来27年間パイナップルや、かぼちゃなど石垣島の気候と土壌を活かした特産品を数多く栽培し、全国各地へと送り出している。
平安名 「パイナップルはもともと自然に育つもので、有機肥料を入れ過ぎると本来の味が失われてしまう。だから、なるべく自然に近い状態を保ちながら、しっかりと手をかけて育ててあげないといけないんです。」
おいしさと大きさを両立することが難しいパイナップル。平安名さんはこだわりのパイナップルを自分たちの手で作り上げるために、20年前に仲間とともに『石垣島パイン生果組合名蔵』を立ち上げた。長年にわたり最適な栽培方法の研究を繰り返し、こだわりのパイナップルを作り上げる。今でも試行錯誤は続いている。答えのひとつが1年ごとに栽培方法を分けることだったという。
平安名 「まず1年目で木を育てます。肥料も与え草取りもちゃんとする。すると木に栄養がゆき渡り大きく育つ。2年目に入ると肥料をなくし、より自然に近い状態で育てる。すると本当のパイナップルらしい味と大きさになるんです。」
こうして2年間じっくりと、大切に育てられるパイナップル。もちろんそのこだわりは味や大きさだけにとどまらない。平安名さんは、食の安心・安全や継続的に農業を続けるために生育工程管理や環境などにも気を配る。
2018年には、食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証制度である『ASIA GAP』を取得。単に作るだけではないさまざまな視点で、安心・安全でよりよい農業のあり方を模索し続けているという。
平安名 「将来的にはこのパイナップルを海外でも販売して、多くの方に石垣島のパイナップルを味わってもらいたいと思っているんです。そのためにはこの国際資格が必要になります。」
追熟しないパイナップルだからこそ、早く届けたい
最盛期には1日約3トンにものぼるパイナップルが平安名さんの畑から収穫・出荷されていく。そのほとんどは現在、航空機に搭載されて本土へ出荷しているという。その理由はパイナップルの特性にあると語る。
平安名「パイナップルは"追熟"しません。刈り取った瞬間からだんだん味が落ちていくので、いかに早く届けるかが勝負です。昔は船が中心でしたが、今は安定した数を、とにかく早く運ぶことが求められる。それに、少しでも美味しい状態で味わってもらいたいですからね。だから私たちのパイナップルはほとんど航空便で運んでいるんです。」
パイナップルを含めた生鮮食品の扱いは空港のスタッフにとっても細心の注意が必要だ。平安名さんが育てるパイナップルのブランド「へんなパイン」は、ANAスタッフによって羽田空港向けのコンテナに日々、丁寧に積み込まれていく。石垣空港スタッフの佐加伊進(さかい・すすむ)は業務への想いをこう語る。
佐加伊「搬入されたパイナップルは出荷量を確認し、就航する機材に適合したコンテナへ積み付けます。飛行中の振動等で荷崩れを起こしてダメージを与えることは許されません。限られた時間できっちりと積み込みます。当然出発時刻を遅らせることも許されません。」
石垣島では、パイナップル以外にもマンゴーやカボチャなど1年を通しさまざまな特産品が航空輸送で送り出されている。本土で生育できない時期だからこそ、石垣島の地の利が活かされる。果物や野菜はもちろんのこと、4月上旬〜6月上旬頃には本マグロ、5月中旬〜9月中旬頃にはカツオ、9月〜6月には車海老といった生鮮魚介類も含まれるという。
佐加伊「旧石垣空港とは比較ならないほど、航空輸送の需要は増加しました。
1週間近く掛けて船で東京まで輸送していたものが、今では石垣島で朝採れたものが、その日のうちに東京の店頭に並ぶ時代。B787型機では1便で10トン以上の生果物を輸送しています。」
多種多様な生鮮食品を一手に引き受けるANA Cargoでは、小型機専用に搭載時の貨物のダメージを軽減する専用の輸送容器「AMB(ANA Medium Box)」の開発も行っており、よりよい手段を追及するために、日々試行錯誤が続けられている。
生産者に寄り添い、最高の輸送品質を提案する
石垣島のパイナップルに限らず、鮮度の理由から時間をかけて運ぶことができない特産品は全国各地に存在する。より多くの人においしい食材を届けることは、航空物流を手掛けるANA Cargoにとっての使命となる。
日本には、まだ知られていない特産品が数多く存在する。そのひとつひとつの可能性を探り、生産者と消費者をつなぎ、より多くの人に歓びをとどけるためにANA Cargoの挑戦は続く。
平安名貞市(ヘイアンナサダイチ)
有限会社平安名 石垣島パイン生果組合名蔵
代表取締役
幼少より家業である農業を手伝い、平成10年に石垣島パイン生果組合名蔵を設立し、6つの農家を束ねてパイナップルを栽培している。夏のパイナップルや冬のカボチャに加え、年間を通じてゴーヤー・ピーマン・いんげんなどのハウス栽培を行う。休みなく年中畑に出るなど、作物への想いは強い。
佐加伊 進(サカイススム)
ANA沖縄空港株式会社八重山事業部
オペレーション課 貨物郵便チーム チームリーダー 貨物担当
2000年3月入社。貨物搭降載業務、機側作業工程管理を経て、2013年の新空港オープン以降は貨物業務を担当。インストラクターも努めており、石垣空港貨物の中心的な存在。趣味はフットサル。休みの日は読書をしながら過ごすことが多いという。
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